精液

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人工受精のために集められた馬の精液
人工受精のために集められた馬の精液

精液(せいえき)とは、動物にみられるオスの生殖器官から分泌される精子を含む液体交尾産卵の際、メスの卵細胞を受精させるために、オスの生殖器から放出される。体内受精をする動物がメスの体内で精液を放出する場合は射精、魚類や両生類など水棲動物が水中に精液を放出する場合は「放精」と呼ばれる。

この項では主としてヒトの場合について述べる。

目次

呼称

精液は、「ザーメン(英語 Semen、ドイツ語:der Samen、「種子」の意)」やスペルマ(イタリア語:sperma,フランス語:Sperme、ロシア語:Сперма、「撒き散らされたもの」の意)とも呼ばれる。

日本語の隠語では、様々な呼び方があり、色が似ていることから「カルピス」「ミルク」「ケフィア」などと呼ばれることがある。

精液の成分

精液は液体成分「精漿(せいしょう)」と細胞成分「精子」とで構成される。

精液は、その3割程度が前立腺の分泌液(前立腺液)で、残りの7割程度が精嚢からの分泌液(精嚢分泌液)で、これらの混合物の中に精子が懸濁している状態である。倍率400倍程度の学習用顕微鏡で精液を観察すると、精子が鞭毛を動かしながら泳いでいるのを観察することができる。一般的には、精液といえば、精子も混ざった液体を指すが、無精子症、精管結紮(けっさつ)後の精液などでは、精子が含まれていない精液が体外に放出されることになる。

精嚢からの分泌液には果糖が多く含まれていて、細胞内部に栄養源をもたない精子の鞭毛運動を起こすエネルギー源に用いられる。精嚢の分泌液と合わさることで精子は初めてその鞭毛を動かして泳ぎ続けることが出来る。前立腺液にはクエン酸が多く含まれ、pHを弱アルカリ性に維持し、精子の生存を助ける。これ以外にも、精液からは多くの物質が分離、精製されており、精液の成分として知られている。例えば、前立腺液には多くの種類のタンパク質分解酵素セリンプロテアーゼ)が含まれている。これは、精液をさらさらの液体にしたり、精子の細胞表面や女性生殖器内の物質に作用し、受精を起こりやすくするのにも役立っていると考えられている。

射精された直後から、精子は精液中の果糖を消費しつつ鞭毛運動を行うが、無酸素運動であるため精液中に次第に乳酸が形成され液性が酸性に傾く。また、精子は空気中・水道水中等においては生存できない。精子はほとんどがタンパク質でできており、デオキシリボ核酸も多く含まれる。

タンパク質分解酵素セリンプロテアーゼに、PSA (Prostate-specific antigen)、前立腺特異抗原と呼ばれる酵素がある。この酵素は前立腺から分泌され精液中にたくさん含まれている。前立腺肥大症前立腺癌などの病変があると、精液中に分泌されるのとは別に、血液中にも分泌されてしまうことから、前立腺の腫瘍マーカーとして広く用いられている(前立腺を参照)。

プロスタグランジンは、前立腺からの分泌液に含まれていることが最初に調べられたため、前立腺 (prostate gland) にちなんでこの名があるが、精嚢からの分泌液に、より多く含まれていることが後に分かった。

射出時の精液の体内における流れ

精巣睾丸)で作られた精子は、運動性を持たない未成熟な状態で、隣接する精巣上体(副睾丸)下部の少量の液体中に蓄えられ、そこで成熟しつつ射精の瞬間を待っている。射精は、まず蓄えられていた精子が精巣上体の平滑筋の収縮により精管へと送り出され、精管の蠕動運動によって押し出されるように精管末端の精管膨大部へと到達する。精管膨大部の開口部は精嚢に合流して射精管に至り、ここで精子と精嚢の分泌液が混合される。この液体は精嚢の平滑筋の収縮により前立腺に送られ、前立腺の分泌液と混合されて精液となる。さらに前立腺の平滑筋の収縮により尿道に押し出され、尿道に入った精液は、陰茎先端の外尿道口から体外に射出される。つまり、射精時に精液が射出されるのは精嚢や前立腺などの壁の平滑筋が協調して収縮することによっている。尿道球腺液(尿道球腺(カウパー腺)の分泌液)も精液の成分となるが、カウパー腺は射精時以前に分泌が起こっており、その粘液状の分泌液は尿道をあらかじめ湿らせすべりをよくし射精に備えるのに役立っている。

ヒトの精液

ヒトの精液の写真
ヒトの精液の写真

ヒトでは、一般的に性交自慰行為による陰茎等への性的刺激により射精が誘発される。

ヒトの精液は、射精直後は濁った白色ないし黄白色の粘り気のある液体であるが、10分程経過するとほぼ透明のさらっとした液体に変化する。その理由は、射精直後には粘り気により女性生殖器内から精液が漏れ出すのを防ぎ、その後は精子の運動を助けるためにさらっとした液体に変化するものと考えられている。

臭い

最初は無臭であるが時間とともに臭気を発するようになり、の花のような臭い、塩素系漂白剤のような臭い、と形容される。「イカのような生臭い」とされることもあるが、これは不衛生な状態の陰茎から発生するの腐敗臭を精液の臭いだと誤認していると思われる。(味もしかり) スペルミンに関係があるとされる。

個人差や体調によって変化するが、苦い味がすることが多い。 人によってはほんの少し甘い場合やしょっぱい場合がある。

その他

皮膚に付着したり、飲みこんでも無害であるが、男性が性行為感染症の原因となるウイルス類に感染している場合、そのウイルスを媒介することが知られている。

射出される精液の量と射出の勢い

1回の射精で射出される精液の量は、個人差が大きく、また同一の人間でも前回の射精からの経過時間や体調、ホルモン状態によって左右されるが、数ミリリットル程度が一般的である。短時間のうちに3~4回射精するなど立て続けに頻繁に射精すれば一時的に精嚢がほぼ空になることはあるが、常に精子が作られ続け補充されていくので、ヒトの副睾丸(精巣上体)は空の状態からでも3日間で満たされる。満タンになっても精子は常に作り続けられ、古い精子は分解され体内に吸収される。俗に、男性は、満タンになっても常に精子が作られ続けるから、過剰な精子を捨てるために定期的に射精しなければいけないと言うのは誤りである。

また長期間射精しなかったとしてもため込める精子の量は一定であり、前立腺などの分泌液の供給にも限界があるので、短時間に立て続けに何度も射精する事は出来ない。そのうち、2回目の射精で射出される精液は粘り気が減少し、射出時の精液の飛距離が伸びる傾向がある。3回目の射精以降は射出される精液の量も少なくなり、精液の飛距離も減少していく。

ヒトの精子の老化

ヒトの男性の精子も中高年になると劣化する。中年になるとホルモン系の老化が始まり、毛髪の質が劣化し始めるのと同様、男性の精子の質も劣化し始める。中高年男性の精子は、若い男性の精子に比較してDNAの損傷が激しく、子供を持つ可能性が低下することが近年の研究で明らかになっている。欧州での報告によると、被験者2,100人を対象とした研究で、45歳を超える男性の精子DNAの損傷は、それ以下の年齢グループに比較して有意に高く、30歳未満の男性との比較では2倍であった[1]。更に米国の研究においても、DNAの損傷と染色体異常は男性の年齢と共に増加し、具体例として遺伝子の突然変異による小人症(軟骨形成不全症)の発症率が上昇するという報告もあがっている[2]。ただし成人後その都度、分裂により精子を形成する男性は出生以前の卵子を維持し続ける女性に比して年齢的に生殖能力が減退する比率は非常に小さいといえる。


関連項目

脚注

  1. ^ 2005年コペンハーゲンで開かれた欧州ヒト生殖学会議(ESHRE)での報告
  2. ^ 2006年米国国立ローレンス・リヴァモア研究所の研究発表[1]

外部リンク

ウィキメディア・コモンズ

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