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気管支喘息(きかんしぜんそく、Bronchial Asthma)とはアレルギー反応や細菌・ウイルス感染などが発端となった気管支の炎症が慢性化することで気道過敏性の亢進、可逆性の気道狭窄をおこし、発作的な喘鳴、咳などの症状をきたす呼吸器疾患である。喘息発作時にはこれらの症状が特に激しく発現し、死(喘息死)に至ることもある。単に喘息あるいはぜんそくと記す場合、一般的には気管支喘息のことを指す。東洋医学では哮喘(哮は発作性の喘鳴を伴う呼吸疾患で、喘は保迫するが喘鳴は伴わない呼吸疾患である。双方は同時に見られることが多い為、はっきりとは区別しにくい。虚証・実証に区別はされるが、気機(昇降出入)の失調で起こる。) なお、うっ血性心不全により喘鳴、呼吸困難といった気管支喘息類似の症状がみられることがあり、そのような場合を心臓喘息と呼ぶことがあるが、気管支喘息とは異なる病態である。
歴史喘息を指す英単語 asthma はギリシャ語の「aazein」という"鋭い咳"を意味する言葉に由来する[5]。 この言葉は紀元前8世紀のイリアスに登場するのが最初とされている。そして紀元前4世紀にヒポクラテスはこの病気が仕立て屋、漁師、金細工師に多いこと、気候と関係していること、遺伝的要因がある可能性があることを記載した。2世紀にはガレノスは喘息が気管支の狭窄・閉塞によるものであることを記し、基本病態についての考察が始まった。 その後喘息についてさまざまな考察、文献が発表されたが、このころまで喘息という言葉は今日でいう気管支喘息のみならず呼吸困難をきたすさまざまな病気が含まれていた。今日でいう気管支喘息についての病態にせまるには17世紀まで待たねばならない。17世紀イタリアの「産業医学の父」ベルナルディーノ・ラマツィーニは喘息と有機塵との関連を指摘し、またイギリスの医師ジョン・フロイヤーは1698年、A Treatise of the Asthmaにおいて気道閉塞の可逆性について記載した。1860年にはイギリスのソルターは著書On asthma: its pathology and treatmentの中で気道閉塞の可逆性と気道過敏性について述べ、またその後19世紀末から20世紀初頭にはエピネフリンやエフェドリンが開発され、気管支拡張薬が喘息の治療として使用されるようになった。この頃まで喘息の基本病態は可逆性のある気管支収縮であると考えられていた。 1960年代に入り気管支喘息の基本病態が気道の慢性炎症であることが指摘され始め、1990年にイギリス胸部疾患学会(BTS)の発表した喘息ガイドライン、および1991年にアメリカ国立衛生研究所(NIH)の発表した喘息ガイドラインにおいて「喘息は慢性の気道炎症である」ことにコンセンサスが得られた。これによりステロイド吸入により気道の炎症を抑え、発作を予防するという現在の気管支喘息の治療戦略が完成した。 分類幼児期に発症することの多いアトピー型と40歳以上の成人発症に多くみられる非アトピー型の2型がある。 病態生理学臨床医は症状によって気管支喘息を定義している。発作性の喘鳴、咳、息切れ、胸部の圧迫感(時間により程度が変化し、気管支拡張薬にて改善する)などが気管支喘息を疑う所見としている。病理学者は組織学的に定義を行っており、好酸球の浸潤や気道壁の肥厚、リモデリングによって特徴づけられる持続性の炎症と喘鳴としている。一方、生理学者は機序によって定義を行っており、多くの異なる刺激に反応して、過剰な気管支平滑筋収縮を引き起こす気道過敏性の状態を気管支喘息と定めている。生理学的な定義のうち特に重要なのが、運動誘発性喘息や吸入アレルゲンによる喘息、アスピリン喘息である。上記、歴史の項に述べられているようにいずれの定義でも再発性の気道過敏性と慢性炎症といった病態生理学に統合されると考えられている。慢性期道炎症によって気道過敏症となり、増悪因子により気道狭窄がおこり喘息症状が起こるとされている。 喘息患者にβ1受容体選択性の高くないβブロッカーを用いる場合、重篤な気管支収縮が起こる可能性がある。やむをえずβブロッカーを用いる必要がある場合は呼吸機能改善率の測定などを行い、気道過敏性が存在しないことを確認してから行うべきである。 疫学2004年の試算で世界に3億人の喘息患者がおり、年間255,000人が喘息で死亡している[6]。また喘息死の80%以上は低~中低所得国で発生しており、今後10年間で喘息死はさらに20%増えるだろうと予測されている[2]。喘息の有症率は1~18%程度と国によって報告にばらつきがあるが、多少強引にまとめると先進国で5~10%程度、発展途上国では1~4%程度である。 日本では1996年の統計で喘息の累積有症率(現症と既往の合計)は乳幼児5.1%、小児6.4%、成人3.0%(16~30歳では6.2%)である[7]。1960年代は小児、成人とも有症率は1%程度であったものが近年増加の傾向にあり、10年の経過で1.5~2倍程度増加している[8]。日本における喘息による死亡者数と人口10万人あたりの死亡率は1995年には7,253人(5.8)、2000年には4,473人(3.6)、2001年には4,014人(3.2)、2002年には3,771人(3.0)、2003年には3,701人(2.9)、2004年には3,283人(2.6)と、年々低下傾向にある(厚生労働省人口動態統計より)。死亡者の約半数は、重度の発作を軽発作だと思い適切な治療が遅れたあるいはされなかった事が原因であるといわれている。 症状自動車、タバコ、工場の煙等の環境刺激因子(アレルゲン)、寒気、運動、ストレスなどの種々の刺激が引き金となり、これらに対する過敏反応として気管支平滑筋、気道粘膜のむくみ、気道分泌亢進などにより気道の狭窄・閉塞が起こる。気道狭窄によって、喘鳴(ぜんめい:喉のヒューヒューという高い音) 、息切れ、咳、痰(たん)などの症状を認める。喘息発作時にはこれらの症状が激しく発現し、呼吸困難や過呼吸、酸欠、体力の激しい消耗などを伴い、時には死に至ることもある。かぜをひくと症状がひどくなることも多い。 アトピー型の喘息患者が発作を引き起こすのはI型アレルギーにより化学伝達物質が発生するためである。その誘因は細菌・ウイルス感染、過労、ハウスダスト(埃・ダニ・花粉・カビなど)・食物・薬物などのアレルゲン、運動、タバコ、アルコール、気圧変化、精神的要因[要出典]などさまざまである。 一方、非アトピー型の気管支喘息の病態生理はまだはっきりしていない。だが、肉体的ストレスを含めたストレスが喘息に悪影響を与えているという説はある[要出典]。 検査
長期管理のマネジメント気管支喘息のガイドラインとしては主だったものとしては日本アレルギー協会による一般臨床医のための喘息ガイドライン2007、日本アレルギー学会によるJGL2006,WHOによるGINA2006及びGINA2008,アメリカのガイドラインであるNAEP2007などが知られている。残念なことに喘息の診断基準というものは完成していない。日本アレルギー協会のガイドラインでは成人喘息の診断の目安が記載されている。
発作性の呼吸困難、喘鳴、夜間や早朝に出現しやすい咳。
自然にあるいは治療により寛解する気流制限が認められる。PEF(ピークフロー)値の日内変動が20%以上、β2刺激薬吸入によって1秒率が12%以上増加、かつ絶対量で200ml以上の増加が認められる。
アセチルコリン、ヒスタミン、メサコリンに対する気道収縮反応の亢進が認められる。気道過敏性を認める疾患は喘息だけではなく、咳喘息、アレルギー性鼻炎、慢性閉塞性肺疾患、うっ血性心不全、ウイルス性呼吸器感染後などでも認められるため注意が必要である。 これらによって気管支喘息と診断をしたら、長期管理を開始する。なお、発作中であったら発作の治療を優先する。長期管理の方法はガイドラインによってわずかな差異があるものの基本は殆ど同じであるためGINA2006に基づいて説明する。なおICSは吸入ステロイド、LABAは長期作用型β2刺激薬、LTRAはロイコトリエン受容体拮抗薬である。
GINA2006では治療目標である良好なコントロールに関して問診によって評価できるとしている。日中に週3回以上症状が出現する、喘息によって日常生活によって制限がある、夜間に喘息症状のために早朝おきることがある、症状を抑えるために気管支拡張薬を週に3回以上使用した、ピークフローが自己最高値もしくは予測値の80%未満である、喘息増悪発作が過去1年に1回以上ある、以上の6項目のうち3項目以上に該当したらコントロール不良であり、ひとつでも該当すればコントロール不十分、また喘息増悪発作が最近認められたらそれだけでコントロール不十分とする。3ヶ月ごとに治療効果判定を行い、コントロール良好群であれば、ステップダウンし、コントロール不良群であればステップアップする。コントロール不十分が持続する場合もステップアップを検討する。JGL2006ではステップ1が症状によって規定されており、その症状にコントロールするようにコントローラーを決定する。ステップ2のコントローラーでステップ2の症状が認められればコントロール不良でありステップ3にステップアップする。 喘息発作のマネジメント喘息発作は時に、意識障害、死亡することもある緊急事態である。リリーバーによって改善がみられないため救急部に受診するというのが典型的である。初期治療としては酸素投与とリリーバー投与となるが、呼吸困難、喘鳴の原因が心疾患など喘息発作以外の可能性があるために注意が必要である。喘息発作の程度は呼吸困難はあるが横になれ動ける小発作、呼吸困難で横になれないが動ける中発作、呼吸困難で動けない大発作に分類される。
喘息死の危険因子これらのリスクファクターがある患者はより慎重な治療が求められる。
喘息発作の治療
小児喘息小児喘息は成長とともに軽快する場合が殆どである。まれに成人喘息に移行する場合がある。小児喘息の既往があったとしても、成人喘息患者のような薬物の制限はない。小児期に喘鳴が認められる場合はウイルス感染、アレルギー、異物の可能性がある。重要な鑑別疾患としてはRSウイルスによる細気管支炎があるが、細気管支炎では一日中喘鳴が聴取されるが、気管支喘息はヒューヒュー、あるいはゼイゼイとした喘鳴が夜間に多い。小児喘息の診断には、他疾患の除外が必要である。2歳から3歳のころ頻繁に喘鳴を繰り返す 幼児は小児喘息に移行するリスクが高いと考えられている。
major criteriaひとつまたはminor criteria2つで小児喘息の確率は76%である。逆に満たさなければ5%の確率となる。 小児喘息のガイドラインとしてはJPGL2005が知られている。春先や秋口などが発作の好発時期である。3歳から5歳の発症が多い。β2刺激薬の吸入とステロイドの全身投与が基本となる。アミノフィリンは嘔吐といった副作用をはじめ、血中濃度の調整が難しく、安全性、簡便性を考慮すると消極的になる。吸入は吸入器(定量噴露吸入器とドライパウダー吸入器)とネブライザーによる吸入が知られている。吸入薬の量は小児であろうが成人であろうが変化がないのが一般的である。これは成長するほど上手に吸入できる傾向があるため、末梢気道に達する薬物量が増えるためである。ネブライザー治療に影響を与える因子としては呼吸パターン、口呼吸か鼻呼吸か、気道狭窄病変の程度、人口気道の存在などがあげられている。 小児喘息の治療の目標とは軽いスポーツを含め、日常生活を普通に行うこと、昼夜を通じて症状がないこと、β2刺激薬の頓用の減少、学校の欠席の防止、肺機能障害の予防、PEFの安定化とされている。小児分野では年齢により薬剤の選択も異なり専門性の高い分野であるがJPGLにてかつてよりは簡略化されている。大まかに述べると2歳未満の乳児喘息、2~5歳、6歳から15歳という区分で分けられている。アトピー性が多いためDSCGを積極的に使うこと、吸入技術の問題で吸入ステロイドの適応が若干異なる。ラーメンやうどんが食べられるようならば、原理的には吸入は可能であり、吸入をサポートするスペーサーも各種販売されている。乳児喘息では中等度でも専門医の下で治療を行うこと、2~5歳では軽症持続型の段階ではICSは考慮に過ぎない、6歳以上では軽症持続型以上ならばICSが原則となるといった差がある。 治療薬物治療気管支喘息治療薬は「長期管理薬」(コントローラー)と「発作治療薬」(リリーバー)に大別される。発作が起きないように予防的に長期管理薬を使用し、急性発作が起きた時に発作治療薬で発作を止める。発作治療薬を使う頻度が多いほど喘息の状態は悪いと考えられ、長期管理薬をいかに用いて発作治療薬の使用量を抑えるかということが治療の一つの目標となる。長期管理薬では吸入ステロイド薬が最も重要な基本薬剤であり、これにより気管支喘息の本体である気道の炎症を抑えることが気管支喘息治療の根幹である。重症度に応じて吸入ステロイドの増量、経口ステロイド、長時間作動型β2刺激薬(吸入薬・貼り薬)、抗アレルギー薬、抗コリン剤などを併用する。長期管理薬を使用しても発作が起こった場合は、発作治療薬を使用する。発作治療薬には短時間作動型β2刺激薬、ステロイド剤の点滴などが使われる。 1997年、β2刺激薬であるベロテックエロゾル(臭化水素酸フェノテロール)の乱用による死亡者増加が日本において大きな問題となった。これはβ2刺激薬の副作用によるものとは言えず、β2刺激薬の吸入により一時的に症状が改善するために大発作に至る発作でも病院の受診が遅れたことが主因と考えられている。 抗炎症薬
1950年代にコルチコステロイドが精製されるとすぐに喘息の治療に用いられた経歴がある。気管支拡張薬で反応しなかった重度の喘息でも極めて有効であったが、長期にわたって全身投与を行うと多くの有害な副作用が出現するため、現在は緊急時の短期間投与のみが行われる。例外としてはステロイド依存性喘息であり、やむをえず、長期ステロイド全身投与を行う。民間療法でステロイドの有害性を過度に強調する情報があるが、これらは吸入ステロイドをはじめとする現在の治療ができる以前の報告である。
現在ガイドラインでも推奨されている第一選択薬のひとつ。強力な抗炎症作用を持ち、コントローラーとして用いられるものが多い。起こってしまった発作を改善させる作用は期待できない。(シムビコート®を除く) 吸入ステロイドとしてはバイオアベイラビリティ(吸収されて血流中に残り、全身に分布する量)が低い薬剤が用いられるため、全身性の副作用(高血圧、肥満、骨粗しょう症、身長の伸びの抑制など)は殆どないと考えられている。薬物量においても全身投与ではmg単位必要であるのに対して吸入ではμg単位で治療が可能である。吸入薬としての副作用としては嗄声、口腔内カンジダなどが起こりえる。吸入薬とはいえ、フルチカゾンで1000μg/dayを超える高用量では全身性の副作用が出現することがある[要出典] 。しかし通常の使用法ではまず考えられない。吸入後はうがいをして口腔内から薬剤を洗い流すか吸入を食前に行い、食事によって口腔内のステロイドを洗い流すことでこれらの副作用のリスクを減らすことができる。ICSを低用量から高用量へ増量するよりも低用量ICSにLABAやLTRAを併用した方がコントロールが良くなる傾向がある。このような報告や吸入薬は全身影響が少ないこともあり、合剤が販売されるようになっている。合剤の代表がアドエア®、シムビコート®である。
吸入器には定量噴露吸入器(pMDI)と自己の吸気にドライパウダー吸入器(DPI)が存在する。フルタイドディスカス・ロタディスク、パルミコート・タービュヘイラー、シムビコート®・タービュヘイラー®、タウナス(製造中止)といったドライパウダー製剤、キュバール(ベクロメタゾン)、オルベスコ(シクレソニド)、フルタイド・エアーといったガス噴霧製剤(エアロゾル)がある。またドライパウダー製剤・ガス噴霧製剤などが上手に吸入できない小児などのために、デポ・メドロール(酢酸メチルプレドニゾロン)、パルミコートにはネブライザーで吸入できる吸入液がある。ガイドラインに基づく治療をしている場合はLABAと併用を行う場合が多いため、セレベントとの合剤であるアドエアなどは携帯する薬品、吸入回数が減ることで利便性が高い。吸入器には定量噴露吸入器(pMDI)と自己の吸気にドライパウダー吸入器(DPI)が存在する。例えばフルタイドの場合はpMDIならばフルタイドエアー、DPIならばフルタイドディスカスである。
クロモグリク酸吸入液(DSCG、商品名インタール等)は肥満細胞の脱顆粒を抑制する薬である。直前に1回吸入するだけで運動や抗原吸入によって引き起こされる気管支収縮を軽減できる。しかし、その効果は吸入ステロイドに劣り、また発作の治療に用いることもできない。非アトピー性が多い成人の喘息では用いる機会はかなり少ないものの、アトピー性が多い小児喘息では比較的効果があり有害な副作用がないということもあり小児科では非常に好まれる薬物である。クロモグリク酸吸入液は(20mg/2ml)で1回1Aで一日3回~4回、電動式ネブライザーを用いて治療を行う。
代表的な経口喘息治療薬。軽症や吸入ステロイド薬の使用が困難である症例においては単独で使用されることが多い。中等症~重症では一般的には吸入ステロイド薬の併用薬として使用される。リモデリング予防・改善効果、運動誘発性喘息、アスピリン喘息、鼻閉を伴うアレルギー性鼻炎や月経困難症及び子宮内膜症の合併では特に使用を推奨されている。代表的なLTRAには、ブランルカスト(商品名オノンなど)、モンテルカスト(商品名シングレア®など)がある。効果発現は薬剤によってことなるが、プランルカストでは2週間、モンテルカストでは1日で自覚症状が改善するというデータがある。アトピー性が多い小児では好まれる。プランルカストは小児の場合は1歳以上に適応があり、カプセル(112.5mg)とドライシロップ(10%)の製剤が知られており7mg/Kg/dayで最大量は450mg/dayである。朝夕に分服する。モンテルカストはチュアブル錠(5mg)が6歳以上15歳未満、細粒(4mg)が1歳以上6歳未満の適応があり、1日1回1錠を就寝前に投与される。特に小児ではJPGL2008ですべてのステップで第一に推奨されている薬剤である。ただしロイコトリエンが関与しない喘息もあり、約60%の患者に効果がみられる。
スプラタミド、ケタスなどといった化学伝達物質阻害剤、ケトチフェン、アゼラスチンといった抗ヒスタミン剤なども処方されることがある。one airway one diseaseという考え方が提唱されており、喘息とアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎を同時に治療すると効果的と考えられている。
気管支拡張薬
吸入薬は短時間型(SABA)は発作時にリリーバーとして用いられ、長時間型(LABA)はコントローラーとして用いられる。長時間作用型気管支拡張薬は反復使用をすると気管支拡張作用は減少しないものの、喘息誘発刺激に先立って投与することで得られる、気管支収縮の予防効果は急速に損なわれる。しかし短時間作用薬物の急速なリリーバー作用は阻害されないという非常に興味深い現象が知られている[要出典]。これらは気管支リモデリングからの説明が試みられている。吸入ステロイドを併用することで、このような現象も予防することができるため、LABAはICSと併用をするべきと考えられている。COPDの場合はSABAは抗コリン薬よりも即効性があるとされているが最大効果は劣る傾向にある。
テオフィリン(テオロング、テオドール他)製剤である。テオフィリンは気管支拡張作用と抗炎症作用を併せ持つ。かつては気管支喘息の中心となる薬物であった。錠剤やカプセルの形態で徐放性製剤として経口投与を行い、急性増悪ではテオフィリン及びそのジエチルアミン塩であるアミノフィリンの静脈内投与を行うことができる。β刺激薬がアデニル酸シクラーゼを活性化させcAMPを上昇させるのに対して、テオフィリンはホスホジエステラーゼを阻害することでcAMPを上昇させる、結果はどちらもPKA活性化による気管支の拡張である。また、気管支喘息とCOPDに対してヒストン脱アセチル化酵素活性の増強作用による抗炎症作用や横隔膜の収縮力増強や呼吸中枢刺激作用も報告されている。徐放性テオフィリン製剤は喘息症状の改善の他、肺機能の改善、就寝前の内服で夜間症状の改善、運動誘発性喘息の予防、低濃度での抗炎症作用が知られている。しかし治療域は非常に狭く、代謝に個人差があるため投与量の設定も個人ごとに異なり5~15μg/mlに血中モニタリングが必要である。また多くの薬物との相互作用が知られている。副作用には中枢神経の賦活作用による痙攣、悪心、頻脈、振戦、不整脈などがある。このような調節が難しいことから長時間作用型のβ刺激吸入薬の普及に伴い、あまり用いられない傾向にある。テオフィリン関連痙攣と呼ばれる副作用が報告され、日本のガイドラインでは小児に対してはその位置づけが後退傾向にある。小児では抗炎症効果を期待して低用量の10mg/Kg/dayから使用を開始し血中濃度を10μg/ml程度を目安にするのが一般的である。血中濃度は迅速キットで測定可能であるため、内服量が不明な時もERで追加が可能である。そのためアミノフィリンは発作治療薬としてしばしば用いられている。
吸入抗コリン薬はβ2刺激薬に比べ、気管支拡張効果が弱く、効果発現が遅い。また、呼吸器粘膜から吸収されることにより口渇感、前立腺肥大、頻脈、緑内障といった副作用が出現する恐れがある。アトロピンの4級アンモニウム塩である臭化イプラトロピウム(アトロベント等)ではこのような副作用は軽減されている。日本ではイプラトロピウムはMDIとしてのみ供給されており、次のような状況では有用性はある。βブロッカーにより気管支収縮が起こった場合、吸入β刺激薬に反応しない急性増悪時、モノアミンオキシターゼ阻害薬を服用している場合、重度の不整脈や不安定狭心症を合併しているため、交感神経系の刺激を回避したい場合などである。作用機序は気道が副交感神経にてトーヌスが維持されているため、トーヌスの維持を解除することで気管支拡張を得る。イプラトロピウム(アトロベントなど)、オキシトロピウム(テルシガン)は気道粘液の粘稠度を増加させないため非常に使いやすいとされている。作用持続時間は6~9時間である。 その他の薬物療法
難治性喘息に対して行われる治療法である。モノクローナル抗体を用いるが遅発性アレルギーが出現するため2時間の経過観察が必要となる。
近年注目されている分子標的薬である。
ムコダイン®,ムコサール®などがよく処方される。排痰に伴い、気道の抵抗が少なくなる。
エリスロマイシンなどの少量長期投与を行う医師もいる。慢性気管支炎、びまん性汎細気管支炎などの合併例には有効である。
麻杏甘石湯、五虎湯、神秘湯、小青竜湯、麦門冬湯などを、証に応じて処方。 気管拡張剤エフェドリンは、麻杏甘石湯などに配合される生薬の麻黄から1885年(明治18年)長井長義によって単離抽出された。 携帯用吸入器吸入ステロイド薬や気管支拡張剤等、定量噴霧吸入器を用いる吸入薬にはフロンが含まれるエアロゾル製品があったが、モントリオール議定書に基づき代替フロンなどへ変更された。代替フロンを使用した製品も2020年までにドライパウダー製剤へ一本化される。ドライパウダー製剤は完全に自力で吸わなければならないため(蕎麦がすすれる程度の力が必要)、高齢者や年少児、重篤な発作が起こっている場合等吸気初速が遅い患者では吸えない可能性があることが問題となる。また、器具によっては吸入器を使った感覚が乏しいものもあり、稀に空になった製品を気づかずに使用し続けてしまう患者がいるが、ドライパウダー製剤はカウンター付きの物がある等、残りの使用回数を把握しやすくしている。エアロゾル剤は中身が見えない為、外観では残り使用可能回数が分からず、使用する際に初めて空と気づくことやまた薬効成分の含まれないガスのみを吸入することがあり問題となる。薬剤によっては吸入した際の違和感、味覚が残るため、それを敬遠する患者もいる。 アレルゲン免疫療法(減感作療法)詳細は「アレルゲン免疫療法」を参照 中程度あるいは他の方法で喘息が制御できない場合はアレルゲンを繰り返し注射するアレルゲン免疫療法(減感作療法)を行う場合もある。90%以上がダニアレルゲンが原因である小児喘息の場合はアレルゲン免疫療法は有効性が高いという意見もある[9]。 その他の治療喘息体操や乾布摩擦、体力づくりが効果を発揮する患者もいる[要出典]。ただし、呼吸筋を鍛えたことにより病状が良くなったと感じるため(ピークフロー値の上昇)で炎症が治まったわけではない。しかし、喘息体操や乾布摩擦が心身に良い影響を与え、喘息自体が良くなるという説はある[要出典]。また、古くから水泳によって改善するといったことも言われているが上記の乾布摩擦と同じ理屈であり、場合によってはプールの塩素によって更に悪化することもあり注意が必要である。水泳による疲労、塩素で喘息を発病した患者もいる。 直接の治療行為には該当しないが、ピークフローメーターにより日頃のピークフロー値の記録をしておくことで自覚症状のない軽い発作を発見できたり、発作がおきやすい時期、時間帯等を把握しやすくなるため、喘息の管理に有効である。ピークフローは症状の変化に先行し変化することが知られている。また重篤な患者ほど自覚症状が出現しにくいためピークフローによって客観的な評価が必要である。ピークフローは3回測定を行い、最高値を記録する。 精神的要因が発作を起こす直接的な引き金となるごく一部の患者には安定剤や心理療法が有効な場合がある[要出典]。しかし、喘鳴が聞こえないが呼吸機能は低下している患者や呼吸機能や酸素飽和度に異常はなくても炎症の悪化により一時的に息苦しい患者、ブロンコレアで痰が大量に詰まり息苦しさを訴えている患者などの場合、それを精神的な訴えととらえ心療内科に転院させて安定剤や心理療法で治療しても無効である。また、難治性喘息に心理療法を施すことについては有効で劇的に良くなっているという説と無効で難治性喘息患者にとっては日常生活自体が慢性炎症の悪化要因であることが多く、無理を軽減することで緩解したと勘違いしているのではないかという説がある。心理療法で喘息が良くなった難治性喘息患者がいるのは事実である[要出典]。 喘息が治る事を過剰に宣伝し、大量の商品、サプリメントなどを買わせる医師や業者がいるので注意が必要。安易にこれらの医師や業者を信じ自然治癒力や自律神経のコントロールだけに固執した結果、発病初期や炎症の悪化時に吸入ステロイドや内服のステロイドによる十分な抗炎症治療を受けず難治化していき、吸入ステロイドを中心とした濃厚な治療を受けてもコントロールできない患者や発作治療薬だけを乱用し続けている患者も一部にいる。 慢性呼吸不全の患者には在宅酸素療法を行う。 気管支喘息の亜型アスピリン喘息アスピリンなどの非ステロイド系抗炎症薬の服用から数分~1時間後に鼻汁過多、鼻閉、喘息発作が起こる。成人喘息患者の約21%は誘発試験でアスピリン喘息を起こしたとの報告がある[10]。この反応はアレルギーによるものではない。COX阻害によるロイコトリエン代謝経路に傾くためにおこる代謝性疾患である。そのためCOX2阻害薬にすると発生率が低下すると考えられている。しかし、COX2阻害薬も他のNSAIDsと同様、喘息患者には禁忌となる。そのためロイコトリエン拮抗薬が用いられることが多い。鼻茸や嗅覚低下を合併することが多い。 運動誘発性喘息健常者では運動によって気道の径が変化することはないが、喘息患者の場合は運動によって気管収縮が誘発される。特に、運動によって臨床的な症状が出現する場合を運動誘発性喘息という。ロイコトリエン拮抗薬が効果的である。 吸入アレルゲンによる喘息吸入アレルゲンに対して遅発性喘息反応が起こることがある。曝露後、数時間から数日間気道過敏性が亢進するのだが、詳細な機序は不明である。過敏性肺炎とは異なり1型アレルギーである。 咳喘息咳喘息(cough variant asthma; CVA)の症状は、慢性に咳が出る(8週間)。呼吸困難・喘鳴はない。症状が非特異的で、生理学検査(スパイロメトリーなど)で異常が認められず、ドクターショッピングを引き起こしやすい。気管支拡張薬が有効。 気管支喘息と鑑別を要する疾患
one airway one diseaseone airway one diseaseという考え方が提唱されている。喘息とアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎がよく合併することはよく知られている。これらを同時に治療することで治療効果が高まると考えられている。特に、アレルギー性鼻炎や花粉症の合併は多い。アレルギー性鼻炎の治療は症状に合わせて選択される。 詳細は「アレルギー性鼻炎」を参照
脚注
関連項目参考文献
外部リンク
Questions for article: Adoair 喘息, チャーグストラウス症候群, チャーグストラウス症候群 ステロイド, チャーグストラウス症候群の専門医, ブロンコレア, マクロライド 低用量 気道分泌, チャーグストラウス, saba 発作 メプチン, 呼吸器学会 200ml, 喘息 患者数 GINA, 日本アレルギー学会喘息ガイドライン専門部会監修『喘息予防・管理ガイドライン2006』 協和企画、2006年、22頁。 |
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