モデム

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モデムmodem変調復調装置)は、デジタル信号伝送路の特性に合わせたアナログ信号にデジタル変調して送信するとともに、伝送路からのアナログ信号をデジタル信号に復調して受信する通信機器である。

変調・復調を行うことからmodulator demodulatorの頭文字を取って名付けられた。

通信方式は、ITU-Tにより標準化されている。

目次

インターフェース

内蔵用PCIモデム
内蔵用PCIモデム

接続法

パーソナルコンピュータルーターなどとはRS-232CRS-422などのシリアルインタフェースで接続するのがほとんどである。また、パソコン本体に内蔵されたものや、PCカードタイプのものもある。機種によってはUSBで直接接続するものもある。ケーブルモデム・ADSLモデムなどの高速なものは、LANポート(イーサネット)で接続するものが多い。

加入電話回線用のモデムの加入者線側は、電話用6芯モジュラージャックにモジュラーケーブルで接続する。モデムとして基本的に利用するのは六芯のうち二本だけだが、基本的には壁面端子と電話機の間にモデムを設置するため、多機能電話機などが要求する六芯すべてが結線されたモジュラーケーブルが望ましい。

通信方式

  • 単方向 : 単方向通信のみ可能で、送信側受信側の切り替えのできないもの。
  • 半二重 : 通信方向を切り替えて使用するもので、送信・受信を同時にできないもの。現在でもPOSシステムや、銀行向けの業務用システム(全銀手順)の一部で使われている。
  • 全二重 : 各種複信方式を利用して、送受信を同時に行えるようになっているもの。現在一般的に使用されている。

同期方式

  • 非同期モデム : 一般的に使われるタイプ。モデムには、同期の機能が無いものである。調歩同期式でビット単位同期、High-Level Data Link Control (HDLC) などのフラグ同期またはキャラクタ同期でブロック単位同期を、データ信号自体で取りながら通信する。同期モデムに比べて、速度と確実性に劣るが、安価である。
  • 同期モデム : 一部の業務用で使われるタイプ。端末装置から別々の信号線で送信されたデータ信号と同期信号を、一つの伝送路で送信し、受信側でデータ信号と同期信号を分離し別々の信号線で端末装置に受信させるものである。非同期モデムに比べて、確実で高速な通信が可能であるが、高価である。

可聴帯域用のモデム

従来からあるアナログ回線用のモデム。電気通信事業者の敷設したアナログ専用線公衆交換電話網や、利用者が構内に敷設した私設線や、無線通信などの、音声周波数帯域(300~3400Hz)のアナログ回線でデータ通信を行う場合、モデムが使用される。

なお、アナログモデムとの呼称もあるが、アナログ回線に対してデジタル変調を行い伝送する物であり、厳密には不適当な呼称である。同じ加入電話回線に繋ぎ非可聴音を使うADSLモデム等に対して、とくに可聴音モデム、あるいは規格で区別したV.90モデムといった表現は可能だが、一般に認知された表現は存在しない。このモデムを使用した回線はナローバンド接続とも呼ばれる。

コンピュータ等の通信用インターフェース(RS-232Cが多い)と、通信回線の種類に応じた網制御装置(NCU)を持つものが多く、誤り検出と再送信・データ圧縮などの機能を持つものもある。

1985年の通信端末機器自由化をきっかけに、パソコン通信インターネットが登場し、アクセスポイントダイヤルアップ接続する手段として電話回線用モデムが普及したが、ADSLなどのデジタル加入者線の普及に伴って使用が減少した。

形態としては、単体の箱型のものと、コンピュータ内部のマザーボード上や拡張スロットに装着(内蔵)されたものに大別される。

インテリジェントモデム

NCU・変復調・制御部を一体にまとめたモデム。通信用インターフェース(RS-232Cが多い)と通信回線インターフェース(一般の電話回線が多い)を持ち、1980年代のパソコン通信の登場初期から使われている。かつては主流であったが、2000年頃から少なくなっている。

次項のソフトモデムと異なり、動作中にCPUに負担をかけることが少なく、安定して動作することや、特別なデバイスドライバがなくても、RS-232Cポートさえ利用できれば通信できるメリットがあり、産業用機器などの組み込みシステムのコンポーネンツに利用されたことも多い。

インテリジェントモデムをモジュール化し、INS1500のような集合回線に一括接続し、通信用インターフェースにネットワークインターフェースを用いた集合モデムは、アクセスポイントに多用された。

ソフトモデム

Lucent Softmodem Module
Lucent Softmodem Module

ソフトモデムは、モデム側のハードウェアを簡略化し、コンピュータ側のCPUで処理の多くを行うものである。コンピュータに内蔵されたモデムや、拡張スロットに装着するモデムのほとんどは、このソフトモデムである。機能の多くをソフトウェアで実現しているため、安価で新規格にソフトウェアの変更のみで対応が可能である。しかし、処理速度・通信速度・安定性の低下の原因となることもある。また、オペレーティングシステムごとにデバイスドライバの開発が必要である。

基本的に一般的なモデム(インテリジェントモデム)の場合、NCUからアナログ信号とデジタル信号の相互変換を行うADC/DACに接続するまでのトランス・アンプ・イコライザ等のアナログ回路と、ADC/DACと接続され変調・復調・圧縮展開・エラー訂正・コマンド処理を司るDSPとシリアルインターフェース回路で構成されている。コンピューター側のCPUがDSPの機能を担当すれば、ハードウエアで必要な部品はNCU・トランス・必要最小限のアナログ回路・ADC/DACになる。特にDSPは高価な部品なので、省略する事で大幅なコストダウンとなる。

シリアルインターフェースも省略され、生のアナログ信号をADC/DAC経由で高速にCPUと入出力する為、FIFOメモリとホストバスインターフェース(ISAPCI,USB)が使われる。初期のソフトモデムを除き、現在のソフトモデムはアナログ回路からホストバスインターフェースまでの一切をワンチップで構成している。

デバイスドライバはDSPが担当していた処理をエミュレーションし、イコライザ・ゲイン調整・NCUで使用する信号の生成・変調・復調・圧縮展開・エラー訂正・コマンド処理を行い、オペレーティングシステムに仮想シリアルインターフェースの形でインテリジェントモデムが存在する様に見せかけている。

初期のソフトモデムは非常に多くのCPUパワーを消費していた。これは当時のCPUがDSP的な命令セットを備えていなかった為、特に変調・復調処理が重かった。現代のCPUはDSP的な命令セットを備え、かつ並列して一度に実行する事ができる事から、ソフトモデムが登場した頃に比べるとCPU負荷はかなり軽減されている。

部品点数が少なく済む事はコストを引き下げる事ができ、また回路が占有する面積が少なくて済む事、非動作時には電源を切っても構わない事から、ノートパソコンに標準内蔵されているモデムの多くはソフトモデムである。

FAXモデム

FAXモデムは、G3ファクシミリ (ITU-T T.30) の送受信機能を、ATコマンドを拡張して実装したものである。カラーG3 (ITU-T T.30E) などの拡張機能を利用する場合、Class1相当の機能のみを利用することとなる。機械的には、単体モデム・ソフトモデムともに存在する。

1990年代後半より、パーソナルコンピュータ電話網に接続されたファクシミリとの相互通信のために導入されていた。2000年代に入り、業務用のFAXサーバ用として製造されるのみとなっている。

FAXモデム規格
TIA EIA規格 TR-29 Class 特徴 備考 制定年
EIA-578 1 HDLCフレーム生成のみ実装・他の機能はPC側で実現 1990
2 G3の送受信制御を実装・PC側は画像圧縮したデータとコマンドとを送りリザルトを受け取る ドラフト仕様
EIA-592 2.0 最終仕様に準拠

ボイスモデム

ボイスモデムは、データ通信と切替または、対応機器間で同時に声通信が可能なものである。1990年代後半に製造されていたが、2000年代に入りほとんど製造されていない。

ボイスモデム規格
規格名 ITU-T勧告名 声通信 用途 制定年
方式 データ通信との競合
ASVD V.34Q アナログ 中断して切替 公衆交換電話網を利用した留守番電話ボイスメール 1996
DSVD V.70 デジタル 帯域の一部を利用して同時通信 対応機器相互間のテレビ会議・ボイスチャット 1996

通信速度

規格と最高通信速度
ITU-T勧告名 通信方式 最高通信速度(bps) 変調 搬送波周波数(Hz) 制定年 備考
2線式 4線式 速度(baud) 最大ビット 方式
V.21 全二重 300 300 1 FSK 1080/1750 1964
V.22 全二重 1200 600 2 DPSK 1200/2400 1980
V.22bis 全二重 2400 600 4 1200/2400 1984
V.23 半二重 1200 1200 1 FSK 1500or1700 1964 オプションで75bpsのリバースチャネルの追加が可能
V.26 半二重 全二重 2400 1200 2 DPSK 1800 1968
V.26bis 半二重 1972
V.26ter 全二重 1984 エコーキャンセラ使用
V.27 半二重 全二重 4800 1600 3 DPSK 1800 1972
V.27bis 半二重 1976
V.27ter 全二重 1976 エコーキャンセラ使用
V.29 半二重 全二重 9600 2400 4 QAM 1700 1976
V.32 全二重 9600 2400 4 TCM 1800 1984
V.32bis 14400 6 1991
V.33 全二重 1988
V.17 半二重 G3ファクシミリ
V.34 全二重 33600 10.7 1994 スーパーG3ファクシミリ
V.90 下り56000
上り33600
2400(上り) 1800(上り) 1998 中継回線がISDN化されている場合の高速通信用
V.92 下り56000
上り48000
2000

2400bps以上の速度のものは、後述のMNPやLAPMによる圧縮を行うことから、パソコンとモデム間の通信速度は、回線上の通信速度よりも高く設定することがほとんどである。この場合、RS-232CのRS・CS信号のオン・オフでフローコントロールを行う。

Microcom Networking Protocol

MNP(Microcom Networking Protocol)は、アメリカMicrocom(マイクロコム)社が提唱した、モデム用のデータ圧縮とエラー訂正の為の規格の総称。第三者組織によって標準化された規格では無いが、一部の規格は内容が一般に公開された事と、実際にMicrocom Networking Protocolを搭載したマイクロコム社のモデムの伝送品質が優れていた事から普及した。MNP1から10までクラス分けがされており、上位のクラスは下位のクラスの機能を全て含んでいる。他の通信プロトコルと組み合わせて使用される。

  • MNP1 : 誤り訂正プロトコル。 現在は使われていない。
  • MNP2 : 誤り訂正プロトコル。データを受信側から送信側へ送り返すことによる誤り検出プロトコル。全二重通信が可能なら利用可能。全二重モデムに実装可能。
  • MNP3 : 誤り訂正プロトコル。オーバーヘッドを削減するため、MNP2を同期通信対応にして、同期動作としたもの。
  • MNP4 : 誤り訂正データ圧縮プロトコル。送受信するデータをブロック単位にまとめて誤り訂正するプロトコル。送受信されるデータからコントロールビットの重複を取り除き送信効率を上げている。モデムの転送能力を最大120%に向上させる
  • MNP5 : データ圧縮プロトコル。最大で半分に圧縮可能。
  • MNP6 : 通信回線の状態を検査しながら、徐々に送信速度を高速化して、伝送路に合った通信速度とするプロトコル。
  • MNP7 : MNP5を改良したハフマン符号化によるデータ圧縮プロトコル。最大で3分の1に圧縮可能とした。
  • MNP9 : 誤り訂正プロトコル。 誤りの部分だけの再送信とし、送信効率を上げるもの。
  • MNP10 : 移動体通信など用の、伝送路の状態変化により通信速度やパケットサイズを調節し、再送信などを減らして送信効率を上げるもの。

なお、MNP8は欠番である。

LAPM・V.42bis

ITU-T標準プロトコルで規定された、エラー訂正とデータ圧縮の方式。エラー訂正はMNP4と互換。データ圧縮は独自の方式で、MNP5よりも効率が高い。2400bps以上のモデムで広く使われた。

網制御装置

網制御装置(もうせいぎょそうち)は、NCU(Network Control Unit)とも呼ばれる、一般加入者回線に接続するために、交換機に対し回線の接続・相手側の電話番号の通知・切断・通信先等の変更等の処理を行う機器である。

初期のものは、電話機の形状をしており、回線接続などの動作は手動でダイヤルしたり、回路を切り替えたりしていたが、後に、コンピュータからの制御により自動発信、自動着信などもできる様になった。

初期段階では、NCUから制御用信号専用のケーブルでモデムに接続されていたが、後にモデムと一体化された機器が登場する。ヘイズATコマンドという業界標準のコマンドを搭載したモデムが登場してからは、専用ケーブルを介して制御する必要がなくなり、制御コードの標準化と通信回線接続のモジュラジャック化に伴い、一般のパソコン通信等でも使えるようになった。

ヘイズATコマンド

ヘイズATコマンドとは、アメリカのHayes Computer Products社が開発したインテリジェントモデムのコマンド体系で、ATtentionの略である、「AT」でコマンドが始まることからこう呼ばれる。

ヘイズ以外のモデムメーカーも同コマンド体系を採用したため業界標準となったが、各社の独自の拡張がされた部分には互換性が無いこともある。

端末からの命令を「コマンド」、モデムからの応答を「リザルトコード」と呼ぶ。

ATコマンドは、次のようなビットストリームから始まる。

A|1s|0x|1|0|0|0|0|0|1|0s| T|1s|0x|1|0|1|0|1|0|0|0s|

スタートビット (1s) から最初の1が現れるまでの間に0 (0x) が現れればバイト長が8bit,現れなければ7bitと判定できる。続いて、5個の0の後に現れる1までの時間を測定する事で速度(bit per second)を測定できる。これを利用してヘイズATコマンドを採用するモデムはDCE-DTE間の速度及びフォーマットを自動判定する機能を備えている場合が多い。実際の実装は、Aが小文字であった場合を考慮してある、ストップビット長をAの後にくるTの間で判断するなど、若干複雑である。

ITU-T V.25bis

ITU-Tが定めたモデムのコマンド体系。ヘイズATコマンドはモデムによって独自の拡張が行われており、通信するにあたってモデムを何らかの形で識別しなければならないが、V.25bisではシリアルインターフェースの制御状態からコマンドとその手順が厳密に定義されており機種依存の問題は殆ど無い。ルーター等に接続される事を前提としたモデムで採用されている。コンシューマー向けの製品では一時期V.25bisとヘイズATコマンドの両方をサポートしていたが、現在ではV.25bisをサポートしていない製品が殆どである。

衛星モデム

通信衛星を利用した、デジタル通信に用いられるもの。多元接続の機能を持つものが多い。

光モデム

従来のアナログモデムより高速性と、ノイズへの耐性を高めるなどの安定性を目的としたモデム。RS-232Cなどのシリアルインターフェースを半導体レーザー光に変換して、光ケーブルを用いて通信する。用途はNTTがサポートするアナログ回線の内、特定回線によるものとほぼ同じで、アナログの専用線からの置き換えが進んでいる。

無線モデム

シリアル信号を無線によって伝送するもの。古くは小出力のFMラジオ波を使用した物、特定小電力帯域を使用した物等があったが、現在の無線モデムは免許が不要でかつ高速通信ができる2.4GHz帯域でスペクトラム拡散を用いた物が主流である。単なるシリアル通信だけではなく、より高度な応用を目的とした物にBluetoothがある。

ケーブルモデム・DSLモデムなど

ADSLモデム
ADSLモデム

ブロードバンドインターネット接続などの高速デジタル通信用のモデム。コンピュータ等とは、LANポート(イーサネット)でPPPoE等によるブリッジ接続、あるいはルーターに内蔵されてルータ接続するものが多い。

関連項目

ウィキメディア・コモンズ

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