ミサイル

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ミサイル (missile) とは軍事用の投射体で、遠隔操作、または自律飛行によって、目標を攻撃する兵器である。日本語では誘導弾という。ロケットジェットエンジンなどを動力として飛行し、様々な電子装置を用いて目標物に誘導する。自己の推進システムと誘導システムを備えたものだけをミサイルと言うが、推進システムを持たず、誘導システムのみを備えるスマート爆弾も技術上の共通点から同列と扱う事もある。

目次

語源

ラテン語の動詞 "mittere"(投げる)から派生した形容詞"missile"(投げられるもの)でありローマ時代ではミッシレと呼ばれていた。原義では投射体、飛び道具、投石を指すが、現代では主に推進システムと誘導システムを持つ兵器を指す。

ミサイルの種類

エグゾセミサイル発射の瞬間
エグゾセミサイル発射の瞬間

対地ミサイル

地上の固定目標を攻撃するミサイル。一人で扱う小型ミサイルから巨大なICBMまで幅広い種類がある。

弾道ミサイル
大気圏外を弾道飛行して目標へ到達するミサイル。射程距離で分類されるが明確な基準はない。ICBMだけはSALT-IIで射程5,500km以上の弾道ミサイルと規定されている。核弾頭を積んで戦略兵器として使用される場合と通常弾頭を積んで戦術攻撃に使用される場合がある。
大陸間弾道ミサイル (ICBM, InterContinental Ballistic Missile)
中距離弾道ミサイル (IRBM, Intermediate-Range Ballistic Missile)
射程2,000~6,000km程度のもの。
準中距離弾道ミサイル (MRBM, Medium-Range Ballistic Missile)
射程800~1,600km程度のもの。
短距離弾道ミサイル (SRBM, Short-Range Ballistic Missile)
射程約800km以下のもの。スカッドミサイルもこれに入る。
潜水艦発射弾道ミサイル (SLBM, Submarine-Launched Ballistic Missile)
射程の長短にかかわらず潜水艦から発射される弾道ミサイルはすべてSLBMに分類される。
空中発射弾道ミサイル (ALBM, Air-Launched Ballistic Missile)
射程の長短にかかわらず航空機から発射される弾道ミサイルはすべてALBMに分類される。現在までに実戦配備されたALBMは無い。
地対地ミサイル (SSM, Surface-to-Surface Missile)
地上から発射される対地ミサイル。
空対地ミサイル (ASM, Air-to-Surface Missile)
航空機から発射される対地ミサイル。
艦対地ミサイル (SSM, Ship-to-Surface Missile)
艦船から発射される対地ミサイル。地対地ミサイルの略語もSSMで紛らわしいため、艦対地ミサイルを特に区別してShSMと呼ぶこともある。
対レーダーミサイル (ARM, Anti-Radiation Missile)
レーダーを攻撃するミサイル。誘導装置が通常の対地ミサイルとは異なるため、専用に開発・運用される。主な目標は地上配備のレーダーであるが、巡洋艦などに搭載されている艦載レーダーも攻撃することができる。航空機である早期警戒機のレーダー波を探知するミサイルは対空ミサイルに分類される。
対戦車ミサイル (ATM, Anti-Tank Missile)
対戦車ミサイルは、その名の通り地上の戦車や装甲/非装甲車両を攻撃するミサイルで、目標が地上を移動している点が対地ミサイルとは異なる。歩兵、車両、ヘリコプターから運用されるが、固定翼航空機から運用される場合は空対地ミサイルとなり対戦車ミサイルとは呼ばれない事が多い。

巡航ミサイル

巡航ミサイル (CM, Cruise Missile) は発射プラットフォームにかかわらず大気圏内を動力飛行して目標へ到達する(=弾道ミサイルを除いた)ミサイルのうち、特に射程距離が長いミサイル。長距離を飛翔する必要から、主翼とジェットエンジンを装備することが多い。破壊対象は地上目標もしくは艦船であり、長距離の対地ミサイルや対艦ミサイルの別称といえる。核弾頭を積んだ戦略ミサイルと通常弾頭を積んだ戦術ミサイルがある。

対艦ミサイル

対艦ミサイルは洋上の艦船を攻撃するミサイル。艦船の移動速度は車両と同等のため、対艦ミサイルを対地ミサイルの一部として扱う事がある。この場合の略号はShipではなくSurfaceを用いる。洋上は彼我共に探知範囲が大きくなるため対艦ミサイルは一般的な対地ミサイルより射程が長く、中には弾道ミサイルに匹敵する射程を持つミサイルもあり、これらは対艦用の巡航ミサイルとも呼べる。

地対艦ミサイル (SSM, Surface-to-Ship Missile)
陸上から発射される対艦ミサイル。沿岸防備用兵器として配備される事が多い。
艦対艦ミサイル (SSM, Ship-to-Ship Missile)
水上艦から発射される対艦ミサイル。明示的に艦対艦ミサイルとする場合は潜水艦から発射される対艦ミサイルは含まれない事が多い。
空対艦ミサイル (ASM, Air-to-Ship Missile)
航空機から発射される対艦ミサイル。航空機は機動力に優れるため、ミサイル自体の射程は他の発射プラットフォームに搭載される対艦ミサイルより短めになる。

対潜ミサイル

対潜ミサイルは水中の潜水艦を攻撃するミサイル。対潜水艦兵器として他の兵器と一括して扱う事が多い。

水中ミサイル

ロケット推進魚雷は水中ミサイルと呼ばれる場合がある。実用化されたものにはロシアのシクヴァルがあり、イランも開発中である。

対空ミサイル

ミサイルの飛行時
ミサイルの飛行時

対空ミサイルは上空を飛行する目標を攻撃するミサイル。防空用のミサイルと空中戦用のミサイルに大きく分けられる。

地対空ミサイル (SAM, Surface-to-Air Missile)
地上から発射される対空ミサイル。拠点防空用の長射程ミサイルと野戦防空用の中短射程ミサイルに分けられる。
艦対空ミサイル (SAM, Ship-to-Air Missile)
艦船から発射される対空ミサイル。個艦防空用の短射程ミサイルと艦隊防空用の長射程ミサイルに分けられる。
空対空ミサイル (AAM, Air-to-Air Missile)
航空機から発射される対空ミサイル。航空機同士の空中戦での主戦兵器である。視程外距離戦闘で用いられる長射程ミサイルと格闘戦で使用される短射程ミサイルがある。
弾道弾迎撃ミサイル (ABM, Anti-Ballistic Missile)
弾道ミサイルに搭載されていた再突入体を落下途中の空中で地上から迎撃するミサイル。1950年代に開発された核ミサイルと、1990年代に開発された通常ミサイルに分けられる。
対衛星ミサイル (ASAT, Anti-SATellite)
衛星軌道上の人工衛星を地上から攻撃するミサイル。21世紀初頭には実戦配備されているシステムが無くなっている。

ミサイルの構造

ミサイルは概ね同じような構造を持っている。この章ではミサイルを構成する各装置を進行方向から後ろに向かって解説する。

索敵装置

目標を捜索 (search)、発見・識別するシステム。索敵装置にはレーダーソナーなどの捜索システムと発見した目標の識別を行う敵味方識別装置 (IFF, Identification Friend or Foe) が含まれる。赤外線誘導ミサイルや長射程のミサイル、対地ミサイルの場合、ミサイル本体に搭載されていることも多く、英語ではこれをシーカー (seeker) と呼ぶ。

誘導装置

詳細はミサイルの誘導方式を参照

誘導装置はミサイルの先端付近に取り付けられ、目標を追跡 (tracking) し目標の現在位置とミサイル自身の進行方向とのずれを随時計算して操縦装置へ進路補正を指示する。英語ではガイダンス・システム (guidance system) 、ホーミング・システム (homing system) と呼ぶ。ミサイルには複数種類の誘導装置が搭載される事があり、それぞれ使用される時点に応じて中間誘導装置 (Intermediate Guidance system)、終末誘導装置 (terminal guidance system) と呼ばれる。一種類しか搭載されていない場合は単に誘導装置と呼ばれる。

中間誘導装置

中間誘導装置 (intermediate guidance system) は長射程のミサイルに装備され、ミサイルの進行方向を一定に保つ様に誘導制御する。ミサイルが目標近辺に到達した後は索敵装置と中間誘導装置とは別の終末誘導装置によりミサイル自身が目標を捜索・識別・追跡する。中・短射程ミサイルには搭載されない。以下のような制御装置が存在する。

終末誘導装置

弾頭

弾頭は誘導装置の直後に置かれる事が多く、ミサイルが目標を破壊するために必要な装備である。英語ではウォーヘッド (warhead) と呼ぶ。

通常弾頭
高性能火薬を搭載した弾頭で、搭載量には携帯ミサイルの数キログラムから対艦ミサイルの数百キログラムまでの幅がある。また単なる炸薬では無く対戦車ミサイルなどではモンロー/ノイマン効果を応用した成形炸薬弾や、自己鍛造弾頭 (self forming warhead) となっている場合がある。
核弾頭
核弾頭は戦術兵器の威力 (yield) 数キロトンの原子爆弾から戦略兵器の熱核爆弾の数メガトンまでの幅がある。
ディスペンサー
対人、対戦車、対滑走路用の子弾子(サブミュニション、小型爆弾)を搭載、散布を行うディスペンサー。通常弾頭の一部だが、目標周辺を広範囲に制圧することができる。短距離地対地ミサイルや巡航ミサイルに搭載されている。MLRSATACMSの対戦車子弾子BATには誘導装置が組み込まれており、小型の誘導爆弾となっている。
生物・化学弾頭
生物兵器化学兵器を搭載した弾頭。どちらも使用が国際条約で禁止されている。
その他
トマホーク巡航ミサイルには炭素繊維フィラメントを詰めた弾頭があるとされている。この弾頭を積んだミサイルは発電所、または配電所を目標に発射されて爆発し、ばら撒かれたフィラメントが送電線に絡み付くことでこれをショートさせて使用不能とする。社会の重要なインフラストラクチャーである配電システムを物理的に破壊することなく使用不能とする兵器で、湾岸戦争においてイラク国内の目標に使用されたと言われている。

信管

詳細は信管を参照

弾頭を起爆するための装置で、弾頭に組み込まれて使用される。英語ではフューズ (fuse) という。以下の種類がある。

触接信管
目標へ衝突した瞬間に動作する信管。接触信管、衝撃信管とも呼ばれる。対戦車ミサイルなどで使用されるほか、大部分のミサイルでバックアップ用に装備されている。
近接信管
信管から電磁波を発し、その反射波が一定以上の強さになった時点で動作する信管である。信管から一定の距離以内に目標が侵入した時点で動作する。最初期から現在まで最も一般的な近接信管は電波を利用する物であり、信管から発する電波の反射波が一定以上の強度になると動作する。最近ではレーザー光線を利用する近接信管も開発されている。
時限信管
起動から一定時間後に動作する信管。現在では他の信管のバックアップ用に装備される。
高度信管
電波高度計によって、ミサイルが地上から一定の高度に達した際に作動する信管。主に弾道ミサイルに搭載された核弾頭に使用される。
深度信管
圧力信管とも呼ばれ、事前に調定された一定の水圧(深度)に達した際に作動する信管。対潜ミサイルの弾頭に装備される。

燃料タンク

ミサイルを飛翔させるロケットエンジンの燃料を保管する区画である。

固体ロケット燃料
ミサイルの弾体に直接充填して使用される。またブースターとして外部装備される事も多い。
液体ロケット燃料
ミサイルの弾体に液体の酸化剤燃料のタンクを装備する。初期の対空ミサイルや弾道ミサイルで使用された。取り扱いが難しいこともあって軍用ミサイルとしては次第に使用されなくなりつつある。
ジェット燃料
エンジンとしてジェットエンジンが採用されている場合にケロシンなどの燃料がタンクに保管される。あわせて空気取り入れ口が装備される。

姿勢制御

ミサイルの進行方向と姿勢を制御する装置には以下の方式がある。

排気ベーン
ノズルの中に排気ベーン、またはジェットベーンと呼ばれる推力偏向板を設置し、これを動かすことで推力方向を任意の方向へ向けて機体を制御する。史上最初の弾道ミサイルであるV2/A4には黒鉛でできた排気ベーンが採用されていた。V2/A4の直接の子孫であるR-17(SS-1B Scud)でも排気ベーンが採用されている。
翼による空力制御
ミサイルに取りつけた翼を動かすことでミサイルの姿勢を制御する。現状では最もポピュラーな制御方法である。宇宙空間に進出する弾道ミサイルではこの方法は使用できない。またミサイルの側面に翼が取りつけられるため体積効率が良く無い。このため保管の際には分解しておき発射直前に翼をとりつけたり、翼を機体内に格納したり機体まわりに折り畳んでおき、発射後に自動的に伸展する方法が取られる。一般には後退翼や三角翼がもちいられ、動翼と静翼の二組が取りつけられる。静翼はミサイルの方向安定を司り、大きな面積を持つ。動翼はミサイルの操縦を司り、誘導装置からの信号を元に操縦装置によって駆動される。多くは動翼を後翼とするが高機動ミサイルでは動翼を前翼とする設計もある。三角翼では翼幅が大きくなるため、スペースに制約がある艦載ミサイルではスタンダードミサイル発展型シースパロー(ESSM)艦対空ミサイルのようにミサイルの全長に渡って取り付けられた細長い翼を静翼とする設計が用いられる。ロシアでは短距離弾道ミサイルOTR-21 Tochka (SS-21) に採用された「すのこ尾翼」が空対空ミサイルのR-77でも採用された。この形式の尾翼は最小限の体積で表面積を大きく取れるため有効な操縦が可能とされる。
可動ノズルによる推力偏向制御 (VTC, Vectored Thrust Control)
ロケットエンジンのノズルをジンバルやスイベルなどに載せて可動とし、ノズルの方向を変える事で推力の方向を変更しミサイルを操縦する。翼による空力制御と異なり大気圏外でも使用できるほか、翼が無くなった結果としてミサイルはコンパクトになり体積効率が良くなるため、同じ体積でたくさんのミサイルを搭載できるようになる。一方、エンジン周りの機構は複雑になる。アメリカのジュピター中距離弾道ミサイルポラリス潜水艦発射弾道ミサイルVL-ASROC等で採用されている。
バーニアノズルによる制御
主エンジンとは別に姿勢制御用の小型ノズル(バーニアノズル)を設置し、適宜噴射して姿勢を制御する。史上最初の大陸間弾道弾であるR-7のRD-107/RD-108エンジンでは合計十二基のバーニアノズルで姿勢を制御していた。バーニアノズルは独立したロケットエンジンである場合と主エンジンの排気を導く場合がある。

操縦装置

ミサイルの姿勢制御装置を駆動する方式には以下の物がある。

気体タンクによる駆動
タンクに蓄えられた高圧ガスの圧力で制御装置を駆動する。
ホットガスによる駆動
火薬を爆発させて生じるガスの圧力で制御装置を駆動する。
電動モーターによる駆動

エンジン

ミサイルを飛翔させる主エンジンには以下の種類がある。

固体燃料ロケットエンジン
現代のミサイルは固体燃料を用いるロケットエンジンが主流となっている。これは構造が簡単なため安価であり整備が簡便である点が大きい。
液体ロケットエンジン
液体燃料を用いるロケットエンジンは固体燃料ロケットエンジンに比べておおむね比推力に優れているため、初期のミサイルや長射程を要求される弾道ミサイルで採用されていた。ただし燃料ポンプを始めとする機構的な複雑さや燃料自体の危険性により一定の整備が必要になる。
ジェットエンジン
ジェットエンジンは空気中の酸素を酸化剤として用いることで酸化剤タンクを廃しその分を燃料タンクを大きくする事で一般的なロケットエンジンより長射程を得ることができる。大気圏内を終始飛行し、長射程を要求される巡航ミサイル、対艦ミサイル等で採用されている。空気が無い宇宙空間や海中では使用できないほか、ジェットエンジンは液体ロケットエンジンと同様に機構的な複雑さを持つため、エンジンとしては高価になる。ただしジェットエンジンは航空機用エンジンとして大量生産されているため設計や生産ラインを流用する事で調達コストを削減する事ができる。
ラムジェット
ラムジェットは圧縮機とタービンが無く、超音速で飛翔する際の衝撃波をそのまま空気の圧縮に利用するジェットエンジンである。エンジンに可動部が無いため生産コストを削減する事が可能となる。ジェットエンジンと同様に空気中の酸素を酸化剤として利用できるため酸化剤を搭載しなくてもよく、その分を燃料の搭載に当てることができるためジェットエンジンに並ぶ長射程を実現できる。ラムジェットエンジンを動作させるためには飛翔体を超音速まで加速する必要があり、そのためにブースターを組み合わせて使用する。ブースターは外装とされる事が多いが、全体にかさばるためロシアやフランスのミサイルでは統合型ラムジェットエンジンが採用されている。同エンジンは固体燃料ロケットで上昇・加速し、固体燃料が燃え尽きるとその空隙に空気取り入れ口から取り入れた超音速流を導き、燃料を吹き込んで燃焼させるもので、ブースターを外装とせずラムジェットと統合・一体化させているため極めてコンパクトになるエンジンである。

関連項目

ウィキメディア・コモンズ

外部リンク

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